AOCボルドーおよびボルドー・シュペリウールのワイン生産者連合は、2019年6月28日に総会を開き、気候変動に適応した新たなぶどう品種 7 種のAOC規定への導入を満場一致で承認したと発表がありました。これはフランス初の試みで、いま注目を浴びています。
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この改革は、環境へ配慮した対策をAOC規定に取り入れるべきというワイン生産者たちの強い意志の下、一丸となって取り組んだことにより実現。
その結果、ボルドーおよびボルドー・シュペリウールを名乗るワインは、フランス産ワインの品質管理団体のINAO*が2018年11月に正式採択し、また2019年5月9日に同団体の公式機関誌で発表した農業・環境対策を、フランスで初めて導入しました。
で、けっきょくそれがどんなスゴイことなの!?それはといいますと…!
植物は気温や湿度に敏感。とくに、野生種ではなく作物として人為的に交配をしてきた植物は特に敏感で、気よくある温や湿度の微々たる変化で病気になりやすくなってしまったりします。
ちなみにブドウがかかりやすい灰色かび病などは、湿度が高いとなりやすい病気といわれています。
つまり、すでにボルドー地方の気温上昇は進んでおり、このまま温暖化が進行すると現状のブドウ品種が今後育てられなくなる可能性が高くなる危機がきているのです。(;゚Д゚)
そこで、カビや腐敗病などの病気に強く、強いアロマがあるなどの有用な特徴がみられるボルドー向きの7つの品種が選ばれました。AOCごとに、これらの品種の生産を試みることで、次のことが可能となるそうです!
ココがポイント
- ワイン生産者が、新たな品種の生産を試みながらAOCワインの醸造を継続して行うことができる。
- 生産者全体の観点から言うと、広い範囲のぶどう畑で見られる変化(特に気候関連の変化)を把握することで、中長期的な開発の可能性について理解した上での意見が得られる。
新たに承認された7 品種は、赤ワイン用で4品種(アリナルノア、カステ、マルセラン、トウリガ・ナショナル)、白ワイン用で3品種(アルヴァリーニョ、リリオリラ、プティ・マンサン)。
気候変動に適応し対象となるぶどう品種は下記のような条件で候補となります。📝👀
- 他のワイン生産地で使われている代表的な品種(シラー、ピノ・ノワール、シャルドネなど)ではないもの
- 既に公式にフランスで認定されているぶどう品種
- ヴィティス・ヴィニフェラ同士のクロッシング(メルロとカベルネ・ソーヴィニヨンなど同族品種間の掛け合わせ)
- ヨーロッパの規定では今日までハイブリッド品種が禁じられている。
- 赤ワイン用・白ワイン用ぶどう品種
利用規定
・AOC規定では、気候変動に適応したこれら対象となるぶどう品種は補助品種として指定されており、その作付面積は5%までとされている。
・ワインの種類を問わず、ぶどうをアッサンブラージュする場合のこれらの品種の総使用割合は10%までとする。ワインラベル表記に関する法的規制に基づき、これらの品種のラベルへの記載は認められていない。
・本プロセスの導入は、期間を10年と定め、INAO、ワイン生産者連合、および生産者により締結される三者契約に従うものであり、契約更新は1回のみ可能である。
これら品種は、2020年から2021年にかけて植樹される予定なのだそう。早く元気に育ってほしいですね。
ぶどう畑への気候変動の影響
ワインの品質は、ヴィンテージやテロワールの重要性において、各生産地の気候と環境に特に左右されます。
フランスのその他の地方同様、ボルドー地方でも、ワイン生産者は気候変動による影響を下記の通り既に認識しています。
- 平均気温の上昇による継続的かつ顕著なヴィンテージへの影響
- ぶどう栽培生育期間の短期化
- 熟成および収穫の早期化(過去30年で約20日)
こうした影響は、現段階においてはこれまで通りボルドーワインの品質にとって有利に働いているものの、今後1℃から2℃の気温上昇が見込まれることから、ボルドー地方のワインが持つさまざまな特徴に大きな影響が及ぶものと予想されています。幸いにも、ボルドーワインの生産には、気候変動への適応に向けて、ワイン醸造学上の慣習や農法、植物原料(ぶどう)の選定に対する戦略が既にいくつか導入されています。さらに、ボルドー地方では、香り豊かでバランスの取れた高品質のワインを消費者にお届けし続けるため、新境地を開き、将来を見据えたプランの実現を図っています。
ボルドーのワイン生産者が導入している気候変動への適応戦略
- 剪定時期の繰り下げ
- ぶどう樹の葉面積を減らすための主枝の伸長
- ぶどうを過度の日光露出から守るための摘葉の制限
- より水分ストレスに強い晩熟型ぶどう品種および台木の選定
- 栽培地の見直し
- 収穫日の修正および夜間収穫の導入
- 密植の緩和
ぶどう7 品種の特徴
では、AOC規定に導入された気候変動に適応した新しい7品種はそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。
参考資料を入手したのでまとめてみました。
赤ワイン用品種
■アリナルノア(Arinarnoa)
1956年にフランス国立農学研究所(INRA)により交配・開発された品種
タナとカベルネ・ソーヴィニヨンの交配から生まれた、安定した生産量が望める品種として知られ、灰色かび病に対する耐性がある。
気候変動に上手く適応する品種で、糖度が低く、程よい酸味を持つ。
このぶどうからは、複雑なアロマが長く続き、タンニンの渋味が特徴で変化に富む、構成がしっかりしたワインが出来上がる。
▼アリナルノアが入ったワイン
■カステ
フランス南西部(恐らくジロンド県)原産品種
歴史が古いながらも長らく忘れ去られていたボルドー固有品種で、灰色かび病や、ベト病、特にウドンコ病の被害を受けにくいため、環境利益が期待できる品種である事が明確。多彩な表情を見せるワインは熟成に適している。
■マルセラン
1961年にINRAにより生み出された品種
カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配品種。晩熟タイプで、遅霜の被害を受けにくく、ぶどう収穫期に関しては、ボルドー地方のぶどう畑で栽培される他品種の従来傾向と同様。気候変動に適応し、灰色かび病やウドンコ病に対する耐性がありダニによる被害も少ない品種。ワインは高品質で多彩な表情を見せる、他種と一線を画すさまざまな特徴を持ち、熟成に適している。
▼マルセランでつくったワイン
■トウリガ・ナショナル
ポルトガル原産品種
長熟成品種で遅霜の被害を受けにくいため、収穫期が遅く、気候変動に上手く適応できる。ぶどうつる割病を除くほとんどの真菌病に対して耐性を持つ品種。品質に優れ、複雑さと香り高さが特徴で変化に富むフルボディーのワインは、骨組みがしっかりしており、多彩な表情を見せ、熟成に適している。
▼トウリガナショナルが入ったワイン
白ワイン用品種
■アルヴァリーニョ
白ブドウの王様とも呼ばれる、アルヴァリーニョ。こちらもポルトガル中心で栽培されている品種。
際立つアロマティックな特質を生かし、一般的に暑い気候によって生じる風味の損失を補う品種として期待されている。天候不順への適応能力を持っており、灰色かび病に強い品種。他品種同様、平均的な糖度が期待できるため、繊細で香り良く、程よい酸性度を持つワインに仕上がる。
▼アルヴァリーニョでつくったワイン
■リリオリラ
アルヴァリーニョと同じくアロマティックで、通常暑い気候が原因で起こる風味の損失を補う品種として有望視されている。灰色かび病に強いバロックとシャルドネの交配品種で、花のような香りが特徴の芳醇で力強いワインが出来上がる。
■プティ・マンサン
ピレネー=アトランティック県原産品種
晩熟タイプで、灰色かび病に対し優れた耐性を持つ品種。アロマティックなぶどう品種として知られており、出来上がるワインは純粋に上質でふくよかな甘みが感じられる白ワイン。かぐわしいアロマが心地よく持続する。
デザートワインが多いイメージ。
▼プティ・マンサンでつくったワイン
まとめ
赤ボルドーワインといえばカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランという印象が強く、
白ボルドーワインならソーヴィニョン・ブランがメインで貴腐ワインなどにセミヨン、ミュスカデルがよく耳にする品種になるかと思います。
しかし、こうした常識も地球規模の気候変動によって近い将来からどんどん変わっていくかもしれません。
気温が上がっているのはもちろんボルドーだけではないので、他のワイン栽培地でもこういった動きが加速化していくのではないでしょうか。
これからも美味しいワインがいただけるように、生産者の皆さんを応援したいと思います!
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